45th たいら(3/20)
46th フリィザルフィヤットル Hlíðarfjal, Iceland (3/28)
47th たいら(4/4)
アイスランドでのスキーは、とても楽しかった。
レンタルスキーでエキスパートモデルを選んで、いまいちサイズの合わないブーツとエランのSLの板だったが、極北のスキー場においては道具は二の次。とにかくスキーをするという行為をひたすらに楽しむことができた。
アイスランド人やその他の外国人は、みな思い思いのスタイルでスキーを楽しんでいて、道具やスタイルの細部にこだわってしまう僕やその他の日本人スキーヤーとはずいぶん違うように思えた。大した知識も知恵もないまま高級の上級スキーモデルに散財してきた自分が馬鹿らしくなった。
借り物のスキーでもこれほどに楽しいものか。僕は子供みたいに何度も何度もTバーリフトにまたがって、気に入ったゲレンデを繰り返し繰り返し滑りまくって、もう一回!もう一回!と心の中で絶叫していた。
何がそんなに楽しいかと言えば、雪質と景色とフィヨルドから吹き上げる向かい風に向かって行うカービングターンがたまらなく楽しかった。向かい風のせいでいくらカービングをしてもスピードが上がりすぎないので、一定のスピードで体をかなり傾けながらターンして降りてくることができ、それはまるで遊園地の楽しげな遠心力系の乗り物に何度も乗り込むような感覚だった。
スキー場が街から見えるっていうのもよかった。スキーに行くぞって言って車に乗り込んでからわずか数分でスキー場に到着。スキーが終わって車に乗り込むと、わずか数分で街に戻ってこれる。地形がまるで日本と違った。
そんな経験を経て、日本に戻ってきた僕のスキーに対する姿勢みたいなものが少し変化したように思う。
まず、苦労してターンしなければならなかったラディウス27mの板を使うのをやめた。その代わり、曲がりやすい17mの板に戻した。
(※ラディウスとはスキー板のサイドカーブの半径のことで、ラディウスの値が小さいほど小回りしやすく、大きいほどターンがむずかしい。一般にR12m〜R30mの板があり、国体やワールドカップの大回転競技ではR30mの規定がある)
スキー業界では挨拶のように相手のラディウスを聞く習慣があって、ラディウス値が高いほど感心される傾向がある。なので僕も見栄を張っていたのか、27mとやたらに高い値を誇っていたのだけど、結局それで上手に滑れているかと言えばそうではなかった。
僕の参加している草レースにラディウス規定はない。なので本当はラディウスが低い方がターンしやすいのだが、なぜかみんなバキバキのレースモデル(ラディウス23〜30くらい)だ。もちろんそれらのバキバキの板を扱える人が大半だが、僕には正直扱えなかった。よってそんな板で滑るスキーは楽しいものとはあまり言えなかった。
アイスランドでのスキーがとにかく楽しかったので、僕は見栄を捨ててスキーを楽しむことにした。来週シャルマンスキー場で僕にとって今シーズン最後のレースがある。もちろんR17の板で参加して、僕はひそかなるタイムアップを期待している。だって、簡単にターンできるんだもの。ずるいかもしれないが、タイムアップすることの方が僕には大切だ。ラディウス値はいずれ上がればよいだろう。
アイスランド、フリィザルフィヤットルにて。
おまけ:
アイスランド1周ロードトリップ・フォト日記
Day1:
ケプラビーク
成田から11時間。デンマークのコペンハーゲンで乗り換え。行きの飛行機の中から見えていたのは、スカンジナビア半島を埋め尽くす雪、雪、雪。雪に埋もれる北欧。
コペンハーゲンで4時間ほど時間を潰し、ようやくアイスランドへ。デンマークからの3時間のフライトがかなりきつかった。日本を出発して18時間後にようやくアイスランドが見えてきた。
Day2:
レイキャビク
2日目の朝に空港のレンタカー会社で、半年以上前に予約していたMazdaのCX-3をピックアップ。アイスランドは凍結・氷結が当たり前らしく、日本ではすでに禁止されているスパイクタイヤを履いていた。タイヤがアスファルトをガリガリ言わす音が懐かしい。
地球最北端の都市レイキャビクの市内を観光。とても小さな街で、市内でもっとも高い建物はこの教会ということらしい。観光客もまばらで、空気がやたらにクリーンでなんの匂いもなくて、なんだか外国に来たような気分にまったくならなかった。
レイキャビクのコンサートホール、ハルパ。おしゃれ。アイスランドは付近を流れる暖流のおかげでイメージほどは寒くないと言われているけど、微妙に寒かった。
2日目のレイキャビクの宿はホテルと言う名の民泊。住民のいる普通のアパートの一室を借りてのステイとなった。このアパートを探し出すのに一苦労してどっと疲れた。ちなみにアイスランドの食べ物の物価は異様に高く、(ラーメン一杯2500円くらい)この日の夕ご飯は日本から持ち込んだ缶詰とカップラーメン。もちろん胸焼け。
Day3:
レイキャビク→Nupar
3日目、ついにロードトリップ開始。借りたレンタカーのワイパーのゴムが劣化してて、わざわざ空港まで一度戻ってレンタカー屋さんにゴムを取り替えてもらってからの出発。それでもアイスランドはスパイクタイヤのせいか、粉塵がひどく、フロントガラスがどうしてもすぐに汚れて見づらくなってしまい、非常に運転しにくかった。それもそのうち慣れたけど、最初はなかなか景色を楽しむ余裕もなかった。慣れない外国の道路ですから。
リングロードと呼ばれる国道1号線はアイスランドをぐるっと1周できる。緊張しながらの運転。
こんな感じで地形に沿ったダイナミックでガードレールがほとんどない道を時速90キロでひた走る。追い抜きは対面車が来ない一瞬で行われるので、後続車に追い抜かれるときは、彼らに忍者のようにぴったり張り付かれてから抜かれるので嫌なプレッシャーを受ける。
道中立ち寄った氷河。人生初氷河に感動の著者。アイスランドの氷河はヨーロッパ最大なんですって。
氷河が山肌を削って本当に川のように下りて来ているのがわかる。氷河って偉大だ。
3日目のお宿はとても素敵なホテルだった。受付やレストランをセンターにして、1階建ての部屋が左右に並ぶ。テラス側のドアを開けるとすぐに外に出られるので、なんか面白かった。そして、このドアがその夜、オーロラへと繋がるドアとなった。
疲れて夜の9時にはすでに眠っていたのだけど、オーロラが見えるか気になって眠い目で外に出てみると、空全体にゆらめくものが。肉眼ではじつは緑色ではなくて白かった。なので、眠る奥さんに「オーロラ出てるけどなんかしょぼいよ」と言って、そのまま眠ろうとしたが、奥さんが起きて撮影を開始。一眼レフをいろいろやっているうちにオーロラがすごいことになっていった。かなりの時間外にいて、僕はオーロラを発見する係、奥さんがそれを撮影する係。そんな感じでかれこれ2時間くらいは真夜中のオーロラ鑑賞を楽しんだ。
オーロラが見られるのは短い滞在期間ではわりと少ないチャンスだったりもするらしいのだけど、3日目で見れた僕たちはとてもラッキーだった。
Day4:
Nupar→Hofn
4日目はわりとショートトリップで、氷河のふちをひた走る氷河Dayとなる。
それはもうとんでもない景色が視界に入ってくる。あれはなんだ!?雪の塊が山の間に挟まってるやん!
The氷河part1
The氷河part2
The氷河Part3
The氷河Part4
The氷河part5
氷河観光も終わり、港町であるホプンというところへ到着。その夜はホプンにあるユースホステルへ泊まった。街で観光客に人気のレストランへ。ラム肉のステーキが本当に美味しかった。(無論とても高かった)
ワイーン。
静かでとてもよい街。ホプン。
こんな映画のようなシーンも宿から少しのところで見ることができる。
Day5:
Hofn→エイルスタジール
エイルスタジールという街を目指して。途中、峠越えのとき、リアルホワイトアウトして生きた心地がしなかった。
朝はホステルの広いキッチンで、日本から持参したレトルトのカレーとご飯を温めて、朝からカレーライス。日本の味は元気が出るね。
砂糖をまぶしたケーキのような山々を抜けて。East Icelandのリングロードはほぼ車がいないと言っていいくらい、人がいない。
徐々に不安になってくる。このような峠道の入り口には大きな電光掲示板があって、道の気温や道路状況がリアルタイムで表示されていた。アイスランド語なので意味はわからないけど、雪や風がやばいときはすぐに閉鎖になるらしい。
このときにはもう不安だらけ。この先に何が待っているのだろう。そういえばさっきひっくり返っているワゴン車がいたな。もう運転いやだ。。。。
この前後に猛吹雪になり完全にホワイトアウトして何にも見えなくなった。奥さんの助けなどを借りながらノロノロと前進する。「うしろの車は止まっているわよ!!」とリアビュー奥さん。
峠を無事に超えてほっと一安心!ポニーと呼んではいけないお馬さんがこっちを見ている!
5日目の宿にたどり着き、勝利の祝杯。このあと、ベン・スティラーが映画の撮影を行ったという場所に向かおうとしたら、またホワイトアウトに巻き込まれ、断念。疲れもたまって奥さんと大げんかした。
シャイなアイスランドの少年。
アイスランド人は親しみやすい顔をしている。
Day6:
エイルスタジール→アークレイリ
6日目はスキー場のある、アイスランド第2の都市アークレイリまでのロングドライブ。予定を変更してアークレイリに2泊することにした。
ここの道中がもっともアイスランドな北極な世界を展開してくれた。
地球の果ては美しかった。
ぽつん。
凍結道路も慣れてくると90キロくらいは出せるようになるけど、急ブレーキは禁物。すぐにコースアウトして、地球の果てでレスキューを待つ羽目になる。そんな目にはアイタクナイネ!とにかく、何もなくて真っ白で僕は本当にこの景色が気に入った。
北極的地帯を抜けると今度はマグマ的地帯が現れる。地表のあちこちから硫黄の匂いのする煙が上がっていた。
アークレイリに行くまでの道中には見るべき場所がたくさんあって楽しかった。これは神々の滝、ゴーザフォス。
ようやくアークレイリに到着!ここまで来るのにあらゆる地形をドライブしてやたらに疲れたけど、その分ビールは最高!(もちろん1杯1200円・・・)
Fish and Chips!! この頃には超物価高に対して感覚がマヒ。
「このスープ3000円?」
「安いね!」ってなります。
Day6: つづき
赤信号がハートの形をしているような街なので、それはもう穏やかな街です。アークレイリ。
なんの建物かは知らないけれど、メルヘン度は相当に高い。メルヘン小矢部(富山にあるメルヘンな街)とはぜんぜん違うぜ。アークレイリ。
街から見えるスキー場。(写真真ん中で光っているのがゲレンデ)明日はあそこで滑るんだぜい!アークレイリ。
Day7:
アークレイリ
フリィザルフィヨットル・スキー場
間に見える海がフィヨルド。
頂上付近は風が強くてホワイトアウトしていた。木がまったくないので、どこがコースかわからず、ガスが切れて視界が保てる場所まで手探りで滑る。
Tバーリフトにまたがり中。ヨーロッパのスキー場は強風が多いため、普通のチェアリフトよりもTバーリフトがわりと普通みたい。
爪楊枝がいっぱい刺さってるみたいなスキー場。日本のスキー場とはぜんぜん雰囲気が違ったなあ。
ゲレンデに直接駐車スタイルがワイルド。
スキーを終えたら街まで数分。今夜は贅沢するぞ!
飯!ラム肉!そして、
Beeeeeer!!
最高の1日でした。
Day8:
アークレイリ→レイキャビク
これにて1周1300kmの旅が終了。最後まで油断大敵なリングロード。最後に現れた海底トンネルもまた日本とは一味違った。
だいぶ見慣れた風景。
途中、お馬さんと交流。
とあるレストエリアで見かけた看板。リングロードのレストエリアには無論トイレも自販機もない。というかアイスランドには自販機は存在しない。コンビニも。かと言って文明が遅れているのかと言うとその逆で、かなり先端の文明を行っていると思われる。コンビニも自販機も必要ないことがわかっている国民。首相も国民が直接選挙で選び、EUに入るかどうかも国民が決めた。彼らは入らないことを選んだ。男女平等世界1位。幸福度世界4位。この国から学ぶことは多い。
アークレイリとレイキャビクのちょうど半分のところ。あと191km!!
爆発したと思われる火山の火口へプチ登山。そしてレイキャビクへ戻ってきて、1300kmの旅を終えた。
旅をすると人は勇ましくなり、こんな顔でワインを飲んだりもします。無事生還したお祝いにただでさえ物価の高いアイスランドにおいて高そうなレストランに突入。
ラム肉のサーロイン。
高級デザート。お会計の額には文字通り目が飛び出た。しかし、どれも本当に美味しかった。
Day9:
レイキャビク市内観光→ケプラビークの空港ホテルへ。
こんな素敵な国に住めたらいいな。
鴨さんも平和そうだ。
アイスランド人は極夜になると、本ばかり読んでいるそうだ。国民の自費出版率が非常に高くその率はなんと世界1位で、10人につき1人強の出版率を誇る。「まだ本を出していないなら、彼は今執筆中に違いない 」と言われるほど、みんな執筆しているらしい。ああ、なんて素晴らしい国なんだ。詩人の銅像と共に記念撮影。
最後の日らしく、この日は博物館や美術館をめぐった。
僕は疲れてしまい、車で一休み。その間奥さんは美術館をひとりめぐる旅へと。写真は集合場所のハルパで、海を眺める著者近影 by 奥さん。
初日に僕たちを迎えてくれたアイスランドらしい煙をあげる山が最後の日にも僕たちを見送ってくれた。
アイスランド出身のシガロスというバンドは奥さんのフェバリット・バンドで、それが所以でアイスランドに来たと言ってもいいくらい。空港に向かう最後のドライブ中、シガロスの曲が車内を流れ、こんな空が眼前に広がっていて、奥さんも僕もお互い何も言わずに涙を流していた。
Day10:
帰国。
久しぶりに戻って来た日本は以前とぜんぜん違う風に見えた。アイスランドで感じたことをもとに、いい風に前進できると思った。仕事に追われていても、みんないつか必ず旅に出ようぜ。何かいい答えがそこにあるはずだから。
最後まで読んでくれてありがとうございました。以上を持ちましておまけにしてはずいぶんと長いアイスランド1周フォト日記を終了いたします。
最後に。
Mér finnst landið þitt!!
(写真提供:奥さん Takk!!)