スキーブログ 2018-2019シーズン 52,53,54,55, & 56th Run @たいら(ハイクアップ)&志賀高原横手山スキー場、熊の湯スキー場 「甦る記憶」前編

4/18 たいら ハイクアップ 晴れ 早朝ハード

4/28 志賀高原横手山 フリー 晴れ 午後ソフト

4/29 志賀高原横手山 フリー 晴れ 早朝ハード→ソフト

4/30 志賀高原熊の湯 GS & SL レーシングキャンプ 大雨 硫安ハード

5/1 志賀高原熊の湯 GSレーシングキャンプ くもり 硫安ハード

 

写真が多めなので、フォトダイアリー風に行きます!

 

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午前4時半に起きて、すでに今季の営業終了となっているたいらスキー場で、ショートターンの練習をしに。自作したブラシポールを立てて、合計5本滑った。山頂の方から雪面を切るエッジの音だけが聞こえてきて怯えていたら、僕より先にハイクアップしたらしいスノーボーダーが4人現れて、お互いにびっくりした。雪山をブーツで登るのはマジつらい。

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ハットが風に持ち上げられて、古代中国人と化す。

 

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右手奥のところまで登りきり、その先にある中腹のゲレンデで誰にも見られないように練習。おつかれさまでした!

 

日付変わって、4月28日日曜日、ついに“あの”志賀高原横手山スキー場へ向かう。

“あの”とわざわざルビを振ったのは、その昔僕がまだ23歳だった頃、そこでなんちゃってインストラクターとして一冬過ごしたことがあるからだ。以来、そこには一度も足を踏み入れてこなかった。

それからぴったり20年の月日が流れたなんて、信じられない。その間にじつにいろんなことが起こった。

 

 

じつにいろんなあらゆること。どんな人にも生きていれば必ず訪れるあらゆる困難。あらゆる出会いがあり、あらゆる別れがあった。 

 

23歳の僕があのとき感じていたことなんて、もうほとんど忘れてしまっていたけど、志賀高原に向かう峠の急でまがりくねった坂道を車でのぼっていけばいくほど、僕の記憶はらせんをほどくように鮮やかに蘇っていった。

 

志賀高原に初めて足を踏み入れた23歳の僕は、同じインストラクターとして乗り合いして来るように命じられた野口くんのランクルに埼玉から乗り込み、夜な夜な国道をひた走り、標高が上がるにつれて明るくなる空の下、見たこともないツンドラみたいな景色に息を飲んだ。

ココハキミノシラナイイママデトハマッタクチガウセカイダ。

心のアンドロイドが僕にそうつぶやくのが聞こえた。

(ここはきみの知らない今までとはまったく違う世界だ)

 

朝7時に金沢を出て、下道を中心に約6時間で志賀高原にたどり着く。1日目は車中泊する予定で、車中泊スペースを探すついでに、次の日から泊まる予定のゲレンデ中腹にあるホテルまで行ってみると、楽しげに滑るスキーヤーの姿が目に入り、いてもたってもいられない。

 

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スキー用の快適メガネに付け替えるのも忘れて、2000円のポイント券をリフト終了の1時間前に購入!滑る予定ではなかったけれど、気がつけば2304mの頂上にいる私。

 

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頂上。奥に見えるパンが美味しい横手山頂ヒュッテには立ち寄らず。その昔の20年前、修学旅行で訪れていたリッチな私立高校の先生方が貧乏なインストラクターの私にパンを買ってくれたのもここ。

 

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だそうです。

 

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ゲレンデ中腹にある、次の日から2泊3日でお世話になるホテル。

 

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犬とゲレンデ。

 

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この感じ。なんだか徐々に思い出して来たぞ。

 

リフト終了時刻前に2000円のポイント券を使い果たした僕は、そそくさとゲレンデをあとに。少し下ったところにある、横手山のメイン駐車場を今夜の停泊所と定め、近くのホテルの日帰り温泉に。

 

風呂に入ったあとは、記憶をたよりに熊の湯スキー場までの道のりを散歩しに出かけた。そして、思い出す、思い出す。あの頃の記憶が生き返り、僕の横をついて歩くようだった。

 

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横手山スキー場熊の湯スキー場をつなぐ連絡路。僕が所属していたスキースクールが入るホテルは熊の湯側にあったが、修学旅行生はおもに横手山を利用するので、ほぼ毎朝、受け持ちの班の生徒を引き連れて、この連絡路を歩いた。

 

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これが一望坂。修学旅行生はほぼ登れないので、毎朝、下っ端インストラクター(僕を含む)が雪の階段を作った。

 

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ホテル一望閣、全景。ここの温泉でガス中毒事件がたびたび起きる。以前もニュースになっていたが、僕がインストラクターをしていた頃も、地下にへんなガスが充満し、インストラクターのみんなが病院送りに(僕は正月帰省していて難を逃れた)。

 

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夕暮れ時の熊の湯スキー場。今シーズンは雪の残りがよい。

 

 

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今夜のディナー。高所で気圧が低いため、お湯がすぐに湧いて感激。

 

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なかなか雰囲気が出てきたよ。

 

翌朝は4時くらいに目が覚めて、公衆トイレで歯を磨き、顔を洗った。なんとなくその日泊まる予定のホテルのゲレンデ横駐車場に移動した方がいい気がして行ってみると、一台分だけスペースが空いていて、ラッキー。その直後、早朝ポールトレーニングのレーサーたちがわんさかやってきて、駐車場所探しに難儀していた。彼らには申し訳ないが、僕もリフト券代を払ってゲレンデを滑るひとり。そこらへんは平等に行こうぜ。(朝のレーサーたちはゲレンデコンディションが最高のうちにトレーニングがしたいので、本気で殺気立っている。正直キョわい)

 

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早朝の横手山から眺める最高の風景。

 

メインゲレンデ脇に2コース分のポールが立ち並ぶ中、その間を抜けるようにして早朝6時から滑り始めた。4月も終わりにしてこのコンディション。レーサーたちが殺気立つのもうなずけるね。8時にいったんリフトがクローズされ、その間に愛妻弁当の残りのおにぎりに海苔を巻いて、ゲレンデで食らう。8時半から滑走再開!

 

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群馬と長野を結ぶ志賀草津道路もオープンし、ゲレンデ脇を縫うようにして車が走っていくこの感じはここでしか味わえない。

 

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朝からすでに25kmの滑走を終え、ご満悦の筆者。

 

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お昼前にホテルにチェックインできないか訊いてみたところ、OKが出たので、いったんスキーブーツを脱いで、部屋で長めの休憩をとることに。

レストランの上に増設された、お一人様ばかりを集めたような部屋だったけど、窓の外に横手山が見えて、なかなかゴージャスな気分に。

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昼寝したあと、午後も少しだけ滑り、風呂に入り、夕食の時間を待つ。食事の準備が整ったと館内放送が流れ、ひゃっほーいと言いながら、食事の席につくお一人様。

 

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ゲレンデを眺めながらひとりで食す夕食。この基本セットに食べ放題のビュッフェがつくのだから、腹がはち切れそうになる。基本、少食の筆者。

 

次の日は、平成最後の日。早朝から熊の湯で行われている、カンダハースキーショップ主催のリベルタ・レーシングキャンプに参加する予定だ。レーシングキャンプにひとりで申し込み、ひとりで参加する、この心細さよ。しかも速そうなレーサーの中にひとり突入しなければいけない緊張感。行きたいようで行きたくないような複雑な気持ち。

 

そして、朝4時の目覚ましに目がさめると、外は土砂降りの雨。トレーニングがキャンセルになっていないかメールを確認するも、そんな知らせはなし。こりゃあ行くしかあるまい。

 

準備を整え、SLの板を履き、GSの板を肩に担いで、ホテル前のゲレンデをいざ出発。雨合羽を着込んだスキー夫婦に声をかけられ、早朝の横手山について質問を受ける。

 

筆者「ポールだらけですよ」

夫婦「えー、熊の湯がそうなると思って横手山に来たんに!」

筆者「選手の滑っていないときを見計らって滑ると、案外滑れますよ!」

夫婦「めざとい学連たちやな。横手山は今年から早朝始めたばっかやん」

筆者「・・・」

夫婦「熊の湯にすればよかったかああ」

筆者「熊の湯も似たようなもんらしいっすよ」

 

そんな会話を交わし、GSの板を担いで誰もいない午前5時のゲレンデを滑り降りて行くレーサーな格好をした僕に、夫婦は手を振りながら「気をつけて〜!」と言ってくれた。

 

さて、横手山の麓まで降りてきた僕は、初のSLとGSの板を両肩で担ぎ、しかもストックも持って歩くという荒業に挑戦したのだけど、重い!重すぎる!!!

というわけで、熊の湯スキー場につづく雪の連絡路の上をスキーで滑って移動することにしたのだが、いろんなものが落ちていて、熊の湯についてから板を見てみると、とんでもない量の茶色い松ヤニがソールにべったりとくっついていて狼狽した。

 

そして続く土砂降り。一向にやむ気配なし。

そんな中、現れるリベルタのコーチらしき人に声をかけると、リベルタの人だった。

いきなり熱いお方であることが判明した。

 

コーチ

「キャンセルするのは簡単ですよ!どんな状況でもやってみないと!こんなコンディションでのレースだってあるわけですから!!」

筆者「・・・うっす!」

 

そうして始まった早朝の熊の湯GSトレーニング。多くのチームがポールをそこら中に張り巡らすはずなのに、この朝現れたのは2チームのみ。ゲレンデは広々としていて、さっきの夫婦も熊の湯に来ればよかったのにと思う。

 

土砂降りの中、ポールをセットし、何度もコースを滑る。コーチに言われたことをなんとか理解しようと努めながら、うまくいくターンもあれば、失敗するターンもある。ストックなしで上体を規制してポールに入るバリトレではさらにうまく行かず、不甲斐ない思いをする。

 

そして、水たまりの中に足を突っ込んんでいるのかと思うくらい、ブーツの中が水浸しになっている。リフトを降りて、少し漕ぐとぐちゃぐちゃという水の感触がする。寒い。寒いよ。寒すぎる。ああ、みじめ!

 

そんなみじめな気分のレーサーたちを盛り上げるため、コーチはさらに熱くなってみせる。

 

コーチ「平成最後の滑りだぜえええ!気合い入れて行こうぜえええ!」

レーサーたち「・・・・・(ブルブルブル)」

 

早朝のGSトレーニングを終えると、レストハウスに戻り朝ごはんの時間となった。ジュニアのレーサーたちは、ずぶ濡れのこの状態を笑い飛ばしながらブーツを一度脱いでいたが、僕は濡れたブーツをもう一度はく勇気などなく、水たまりに足を突っ込んだような気分のまま、1時間の休憩が早く終わってくれることを切に願った。

 

午前はショートポールを立てて、SLの練習だった。僕は初めてSLのコースというものを滑ってみたのだが、GSと違い、ポールの間隔が非常にせまいため、GSのタイミングでターンをするとほぼ全部のターンで上体が遅れて行く。ああ、なんて忙しいのだ、SLってのは!

 

結局いい滑りなど一本もないまま、12時まで練習はつづき、へとへとになる。

 

練習後は、またしても横手山に戻るためにあの悪魔の連絡路を通らなければいけない。これはもう地獄だね、という気分で持って来たスキー板を交互に(ひとりで)バケツリレーでもするみたいに、ちまちまと横手山の第一ペアリフトまで運んで、失神寸前で、ホテルに戻って来た。

 

そんなあとに飲むビールと言ったら!!

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もう最高!!

 

そんなあとに食べる大盛りカツカレーと言ったら

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もう最高!!

 

結局最高な平成最後の1日となりました。

 

後編へつづく